完璧より改善。日野折箱店が見つけたDXのほんとうの意味。
経営資源は乏しい小さな会社だけど、大きな夢があるんです。
「日野の折箱で良かった」「商品の付加価値が上がった」
そんなお客様の声に支えられながら、私たちは折箱の可能性を広げたいと日々奮闘しています。
小規模事業者だからこそできる独自の取り組みを続け、折箱を通じて社会に貢献する。
このブログでは、私たちの挑戦と学びを綴っていきます。
「引き継ぐ」想いから始まったDX
「DXって、うちみたいな小さな会社には関係ないですよね?」
自分もそう思っていました。
ただ、自分以外の人に業務をスムーズに受け継ぎたい――それだけは、ずっと心の中にありました。
従業員10名以下、IT担当者ゼロ。
パソコンより、手作業と感覚の世界。
DXなんて遠い国の話にしか感じませんでした。
でも、現場の困りごとは待ってくれません。
注文書の誤記、在庫ズレ、情報の行き違い。
誰かが休めば仕事が止まる。
「このままでは未来がない」と感じたとき、
初めて仕組みでつなぐという考えが浮かびました。
DXの目的は人を減らすことではなく、時間と知恵を次に渡すこと。
それが、私たちのスタート地点でした。
「完璧じゃなくていい」から始めた最初の一歩
まずはアナログから始めよう。
市の産業支援コーディネーターさんの支援をいただき、伴走してもらいながら進めました。
最初に取り組んだのは、工程表と番号を使った管理体制の構築です。
もちろん、最初からうまくいくわけではありません。
現場に合わせてやり方を変えたり、
逆に現場が仕組みに合わせていったり──その繰り返しでした。
それでも、少しずつ成果が見え始めました。
「やってよかった」「現場の精神的な負担が減った」
そんな声が出てきたとき、ようやく“前に進んでいる”実感が生まれたのです。
3つの「目」で会社が変わった
数年経った今、振り返ると成功の鍵は3つの目にありました。
① 現場の目
自分たちの手で見て、動く。
問題は会議室ではなく、現場の中にある。
データを眺める前に、現場の声を聞くこと。
そこから、すべてが動き出しました。
② 他人の目
支援機関、IT専門家、他社の経営者。
外の世界に触れることで、「当たり前」が何度も壊されました。
「そんなやり方があるんですね」と驚くたびに、
自分たちの常識がやさしく書き換えられていきました。
③ 未来の目
数字で確かめ、次の手を考える。
感覚ではなく、データで語れるようになってから、
社員同士で成果を共有できるようになりました。
折箱部門の売上が7倍になったのは、現場と数字の両方を見たからだと思います。
失敗を恐れず、仕組みを育てる
導入したハンディ端末は、うまく機能せず失敗に終わりました。
「業務の流れとシステムの動きが合っていなかった」──今ならわかります。
けれど、その経験こそが次の改善の種になった。
アナログとデジタルを組み合わせ、
現場が使いたくなる仕組みに少しずつ作り直していった。
仕組みは人に合わせ、人が仕組みを育てていく。
DXは導入するものではなく、育てるもの。
この考えが、今の私たちを支えています。
引き継げる会社を目指して
デジタル化で最も変わったのは、実は人でした。
現場が自分で考え、提案し、改善を繰り返す。
繁忙期でも閑散期でも、いつものペースで落ち着いて動けるようになった。
その姿を見るたび、
「これなら次の世代にバトンを渡せる」と感じます。
DXは、結局人を活かす経営なんだと思います。
完璧を目指すより、改善を続ける会社が強くなる。
それが、私たちが見つけたDXのほんとうの意味です。
この数年の学びを、次は自分の言葉で伝えたい。
そんな想いから、11月28日(金)福山庁舎で開催される「DX×交流イベント(第3回)」に登壇します。
「何から始めたらいいか分からない」
「人も時間も足りないけれど、変わりたい」
そんな方にこそ聞いてほしい、等身大のDXの話です。